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お役立ち情報・2016年(H28年)02月号-02.18

2016年2月18日

平成27年以降の「事業承継税制」の改正について


平成25年度の税制改正のひとつに、「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例」があります。この改正は平成27年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する非上場株式等について適用されます。「非上場株式等」とは、中小企業者である非上場会社の株式又は出資をいいます。


この制度は「事業承継税制」という呼び方で知られています。非上場の会社において、経営者と後継者の間で株式の承継を行う際に使われる制度です。中小企業の場合は、事業承継の際に自社株式の評価額が高額になることがあります。それに伴い、贈与税または相続税も高額になりますが、この制度を利用すれば、贈与税または相続税の納税がいったん猶予され、後継者の死亡等により納税が免除されます。


この制度はこれまで数回改正されてきましたが、この改正によって、以前よりは利用しやすい制度になったといわれています。調布市や府中市、狛江市においても、お子様をはじめ身近な方に「そろそろあとを継いでほしい」とお考えの経営者の方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか? 


調布・府中・狛江は、いずれもかなりの中小企業がある都市です


日本は昔から「中小企業が圧倒的に多い国」といわれてきました。調布市、府中市、狛江市においてもその傾向は変わりません。


3市における事業所数については、こちらのサイト(http://jinko.tohkei.info)にて確認できます。


民営の事業所の総数

調布市

6,554

府中市

7,417

狛江市

2,078

(注)平成24年度のデータを引用しています。



3市のデータを合計すると、15,000を超える中小企業が存在することが分かります。こうした多数の中小企業が、地域の経済に貢献してきたことは間違いありません。


○中小企業の事業承継がクローズアップされています


株式会社帝国データバンクの発表(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p150107.html)によると、2014年度の全国の社長の平均年齢は59.0歳に達しています。


この傾向は東京都下においても無関係ではありません。たとえば、調布市においては平成22年に「事業承継実態調査(http://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1374480021151/index.html)」が実施されましたが、市内の中小企業経営者の50%以上が60歳以上であることが明らかにされています。


以上のデータから読み取れることは、以下の2点です。


1.全国の中小企業において、経営者の高齢化が確実に進んでいる

2.中小企業の事業承継が今後急速に、全国各地で問題化していく


このような動向に対応するため、国が整備してきたのが「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例」です。


○「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例」の内容とは


この制度は、相続の場合と贈与の場合で異なります。なお、どちらについても特例を利用するための要件が細かく指定されています。


1.「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例」の内容について


後継者が先代経営者から相続等によって、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式を取得して、経営を行っていく場合に適用されます。


その株式等の課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。その範囲は、相続以前から保有していた議決権株式を含めて、発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでとなっています。


猶予された相続税額は、後継者の死亡等によって納税が免除されます。


2.「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の内容について


後継者が先代経営者から贈与によって、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式を全部または一定以上取得して、経営を行っていく場合に適用されます。


その株式等に対応する贈与税の納税が全額猶予されます。その範囲は、贈与以前から保有していた議決権株式を含めて、発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでとなっています。


猶予された贈与税額は、先代経営者の死亡等によって納税が免除されます。



以上のように、この制度を利用すれば、事業承継の際に課される税額の負担を大幅に軽減することができます。


とはいえ、利用するための要件が厳しかったため、実際に利用する企業は、当初の予想に反して増えませんでした。そこで、再度見直しがされ、この改正で要件がいくつか緩和されました。


○平成27年以後適用の改正で、具体的に変わった点とは

改正内容の中から、重要な点をいくつか抜粋してご紹介します。


1.利用可能な、後継者の範囲


(改正前)先代経営者の親族のみ

→(改正後)先代経営者の親族ではない者でも可能に


2.事前確認に関して


(改正前)経済産業大臣の事前確認が必要

→(改正後)経済産業大臣の事前確認が不要に


3.雇用確保に関して


(改正前)制度の適用後5年間は、当初の雇用人数の8割以上を毎年維持することが必要

→(改正後)制度の適用後5年間は、当初の雇用人数の8割以上を平均して維持することが必要


4.役員退任要件に関して(贈与を選択した場合のみ)


(改正前)先代経営者は、適用を受ける際に役員を退任することが必要

→(改正後)先代経営者が代表権を持たない場合のみ、適用の際に役員を退任しなくてよい


5.認定を取り消された場合に関して


(改正前)猶予されていた納税額を即納することが必要

→(改正後)上記3. 雇用確保の要件が満たされなかったために取り消された場合は、延納・物納が可能に


○税負担を軽減して、スムーズな事業承継を成功させるために


「事業承継税制」の改正は、この制度の利用を促進するために実施されたと考えられています。実際に、要件が緩和されたため大幅に使いやすくなりました。


もちろん、企業様によって抱えている事情は違うため、望ましい活用方法は企業様によって異なります。贈与と相続、どちらを選ぶかによっても結果は変わります。


最適な活用法を知るには、専門的な知識が欠かせないでしょう。事業承継を検討なさっている場合は、相続対策を専門に扱っている税理士に相談することをおすすめいたします。


(※この原稿は、2016年02月の法令に基づき、記載しております。)


カテゴリ
相続税額 計算 シミュレーション
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